『昼夜逆転』工作室
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初めてのVFD点灯制御

タイトル画像
2021年7月 ※製作は2021年4~7月
VFD(蛍光表示管)に興味を持ちました。これを光らせるには、これまで慣れてきたLEDの点灯とは異なる技術が必要です。 そこでVFDの使い方に慣れるためテスト開発を行いました。成果としてゲームを作りました。

VFDの基礎

VFD(Vacuum Fluorescent Display/蛍光表示管)の構造や点灯方法については双葉電子工業の(上海サイトにある)解説書に詳しく書かれています。 AN-1103A 「蛍光表示管(VFD) その特性と使い方」(PDF)
電源は自作することもできます。「基本通りのステップアップコンバーター

様々なVFD

様々なVFD 様々なVFD
左:上から IVL2-7/5(4桁時計型), IV-21(8桁小型), IV-18(8桁)
右:上から IV-11(1桁), IV-22(1桁玉型)
※カッコ内の呼び名は勝手に付けた。

初めてのVFD点灯

様々なVFDの中から、安価ですぐに入手できるFIP9B8(NEC製)を使用しました。 共立エレショップの通販ページ

点灯制御なし

単純に1桁の全セグメントを点灯させる回路で明るさを見つつ、グリッドとフィラメントの適切な電圧を探ります。
電源は高電圧用(MT3608モジュール・抵抗改造済み)と低電圧用(自作・電圧可変)を別々に用意しています。
VFDのセグメントの端子は1つに結線。グリッドの端子はそれぞれ引き出します。 ここを高電圧で触れると、そのグリッド(桁)が点灯します。
フィラメントには直流を流すこととします。 このとき回路図で示した向きに電圧をかけると両端のグリッドの明るさの差が小さくなり、 逆向きに電圧をかけると明るさの差が大きくなるように感じました(気のせいかもしれません)。 回路図

VFD点灯の様子
許容できそうな範囲
グリッド:10V~24V(+-10%程度)、 フィラメント(DC):2.0~3.0V

適度な明るさ
グリッド:15~20V、 フィラメント(DC):2.5V

写真はグリッド:9V、フィラメント(DC):2Vです。 フィラメントには回路図と逆向きに電圧をかけていましたが、壊れるわけではありません。

ツイッターのスレッド

初めてのVFD点灯。FIP9B8 (NEC製)。https://t.co/8PKk1hqCeW 実験したところ電圧範囲は、グリッド:9~24V、フィラメント(DC):2.0~3.0V、程度。写真は読める程度の最低値狙いで 9V;2.0V。 pic.twitter.com/PHniStBNe0

— 『昼夜逆転』工作室 (@jsdiy) April 29, 2021

▲枠内下部の吹き出しマークから「初めてのVFD点灯」に関する一連のツイートを見ることができます。

VFDの点灯制御

点灯制御あり

1桁ずつ別の字形が表示できるように点灯制御します。それにはVFDドライバーを用い、ダイナミックドライブで点灯させます。 VFDドライバーは「ラッチ付きシフトレジスター+トランジスタアレイ」のようなICで、出力が20bit,32bit,40bitなどの品種があります。 また、BLANKING端子があるのでダイナミックドライブには都合がよいです。
※シフトレジスターの内容に関係なく1パルスで全bitにLoを出力=VFDが全桁消灯できる。
この回路でVFDのフィラメントに流れる電流は1mAもないので、マイコンのPWM出力をフィラメントの電源としてみました(回路図の破線部分)。
回路図

VFD点灯の様子
don't,touch. と表示
 
VFD点灯の様子
VFDドライバーの配線
 
VFD点灯の様子
グリッド:20V フィラメント:2.5V

プログラム

ダウンロード FIP9B8CtrlTest.zip(プロジェクト一式)
開発環境: Windows10, AtmelStudio7
マイコンはATtiny85を使用しています。 USI機能を使い、VFDドライバーに20bit分のデータ(グリッド9個+セグメント11個)を出力します。 具体的にはデータを3byte(24bit)に詰め込んでUSIで3byte出力するごとにSTROBEします。 なお24bit中の上位4bitは毎回DataOut端子からシフトアウトしていくので、必要なデータは下位20bitにセットします。
ダイナミックドライブで桁を移動する一瞬はBLANKINGを有効にします。そうしないと隣の桁に残像のように字形が現れてしまいます。
【参考】 7セグのセグメントが薄っすら光ってしまう件

ゲーム製作

拙作・パズルアクションゲーム「セグメントアタック」を移植しました。 元は4桁7セグLED用のゲームですが、9桁を活かした形に改造しています。

回路図

「点灯制御あり」の回路からATtiny85のPB0をボタン入力に変更し、またフィラメントの電源を2.5Vの三端子レギュレータで供給するようにしています。

回路図

プログラム

ダウンロード VfdSegmentAttack.zip(プロジェクト一式)
開発環境: Windows10, AtmelStudio7

動作の様子

弾を撃って数字の形を作ります。だんだん近付いてくる敵にどんどん弾を撃って倒します。 自陣まで攻め込まれたらゲームオーバーです。左のカウンターは倒した敵の数です。

部品について

20bitのVFDドライバーは、HV5812(SOP), MAX6921(SOP), UCN5812(DIP)が入手しやすいです。AliExpressやeBayなら安価で入手できます。 どれもピン互換ですが電圧範囲などいくらか違いがあります。 なお、この記事の回路図ではHV5812としていますが、実際はUCN5812を使用しています。
※ブレッドボードではDIPが使いやすいので。後で基板に移すときSOPを使おうと思っていたが、結局そこまでやらず。

◆ ◆ ◆

青緑色の輝き。昭和の電子ゲーム機やオーディオ製品の表示部にはVFDがよく使われていました。 パックモンスター(学研)とミニコンポのグライコ(ONKYO)は忘れられません。
令和になって自分でVFDを使いこなせるようになって、感慨ひとしおです。