図1は上述の、ステップアップコンバーターの仕組みを表した図です。この中でFETのスイッチングと電圧監視をまとめた電源ICがあります。 例えばMT3608を使用したモジュールがAmazonやAliExpressで入手できます。
図2はMT3608のデータシートに掲載されているアプリケーションの概略です。抵抗比によって出力電圧が設定できます。
MT3608はA点(FB:feedback)が0.6VとなるようにB点(V-OUT)の電圧を調整する動作をします。
換言すれば、V-OUTを抵抗で分圧してFBが0.6Vとなるように制御します。
従ってFBとGNDの間に入れる抵抗を固定値にし(R)、他方の抵抗を可変にすれば(VR)、感覚的な操作で出力電圧が設定できます。
※VRの変化量と出力電圧の変化量が比例するので調整しやすい。
なおVRの値が小さいとき、抵抗比の計算上はV-OUTがV-IN未満になりますが、実際には経路上の部品の電圧降下分より下がることはありません。
※そのときV-INからV-OUTまで直流が流れ続けるとしたらLが焼ける可能性はある。
ところが通販で入手できるMT3608モジュールのうち、図3aのような回路になっているものがあります。
この回路ではVR(多回転ボリューム)を変化させるとFB-GND間の抵抗値も変化してしまいます。
そうするとVRの変化量と出力電圧の変化量の関係が非線形となり(感覚的に分かりにくい)、出力電圧の設定がやりにくくなります。
そこで図3bのように、VRの調整点とR側の端点をショートします。こうすると図2の回路と等価になります。
多回転ボリュームが使いにくいので、よくある形のボリュームに交換しました。また、小型電圧計を取り付けました。
この回路において小型電圧計は2線タイプではなく3線タイプの方が向いています。
2線タイプは測定部位から電源を取るのでMT3608モジュールに負荷がかかります。特に7セグ点灯のために数十mA必要とするのが痛いです。
3線タイプは測定部位とは無関係に電源を取るのでMT3608モジュールに負荷がかかりません。
MT3608モジュールは実験などで取り敢えず使いたいというときに便利です。 しかし工作に利用する場合、入手性や部品レイアウトの都合から既製品が使いにくいこともあります。 今回、動作原理の理解を深めることも兼ねてステップアップコンバーターを自作しました。
FETのスイッチングと電圧監視にマイコンを使います。PWMを開始/停止し、R2の電位をVCC/2[V]に維持するよう制御します。
R1,R2,VR1の値でVoutの範囲が決まります。VFDの工作には20~30V必要なので、ここではそうなるよう抵抗値を決めています。
またVrefをVCC/2としているので、VCCの値によってもVoutの範囲が変わります。
R1は無くても動作しますがVoutの範囲を決めるのに一役買っています。
出力側のコンデンサーC2,C3の耐圧はVoutの最大値を考慮して決めます。
R1 | 22kΩ | 10kΩ | 47kΩ | 47kΩ | 10kΩ | 100kΩ |
VR1 | 100kΩ | 100kΩ | 50kΩ | 50kΩ | 50kΩ | 50kΩ |
R2 | 22kΩ | 10kΩ | 10kΩ | 10kΩ | 10kΩ | 10kΩ |
Vref | 4.5V | 2.5V | 2.5V | 2.2V | 3.5V | 2.5V |
Vout | 9~29V | 5~30V | 14~26V | 12~23V | 7~24V | 27~40V |
(VoutはVin=5Vとしたときの理論値)
ハード的には抵抗値を決めるのが面倒でした。手持ちのVR(100kΩと50kΩ)を活用したくて、そこからR1,R2,Vrefを決めました。
ソフト的にはPWM制御が案外難しかったです。タイマー割り込みではなくメインループ内でADCを動かし、PWMを止めたり再開したりしています。
そのため処理手順が適切でないとVoutの上限が設計の80%ほどしか出なかったりします。
ステップアップコンバーターを自作してみて、このようなことが分かりました。
1つのマイコンでVFD点灯も昇圧もやろうとするとき、今回得た知見が役に立ちそうです。