『昼夜逆転』工作室
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Electromagnetic 7-segment display の動かし方

タイトル画像
2022年8月
Electromagnetic 7-segment displayを使ってみようと、触り始めたのが2021年8月頃。 試行錯誤の末、制御できるようになったので記録を残します。

Electromagnetic 7-segment display

Electromagnetic 7-segment displayは Flip dot displayの仕組みを用いた7セグメント表示器です。 直訳すると電磁式7セグメント表示器。ここでは略して「電磁7セグ」と呼ぶことにします。 ※他所では通じません。

「Flip dot display」で検索すると Alfa-Zeta社のサイト (flipdots.com)がヒットします。 様々な電磁式表示器の中から「Small 7-segment displays」に注目しました。
(ALFAZETA > Products & Services > Small 7-segment displays)

データシート

Small 7-segment displaysのページに Technical dataが記載されていますが、寸法図など書かれたデータシートもあります。 electromagnetic_small_7segment_display.pdf
(ALFAZETA > Download > Electromagnetic small 7-segment displays - general description)

作動条件

この電磁7セグでは、コイルのSET端子からRESET端子へ電流を流すとセグメントがオモテ面に反転し、RESET端子からSET端子へ流すとウラ面に反転します。
電流が小さいとセグメントが反転しなかったり、不完全な反転になったりします(揺らすと元に戻ってしまう)。電流が大きいほど反転スピード(勢い、力強さ)が上がります。
実験したところ100mAでは不安定で、120mA流すと安定して反転しました。コイルの抵抗は実測で50~60Ωだったので8Vかければ一応動作します。

データシート抜粋 データシート抜粋 動作の様子
枠内はデータシートから抜粋。
写真は乾電池006P(9V)を使ってセグメントを一つずつSETしたものです。

電源を検討する

この電磁7セグを動かすには8V/120mA必要ですが、より速い反転スピード、より安定した動作のために150mA必要だと考えると006Pでは電圧不足です。 また、7つのセグメントを同時に反転させた場合、150mA x 7 = 1050mA …1Aも必要なので乾電池では容量的に厳しそうです。
電磁7セグを手軽に使うには電源も簡単に用意できる方がよいので、次のような方針とします。

これにより、乾電池(006P/9V)、USB-ACアダプタ(5V/2Aなど)、ACアダプタ(9V/1A,12V/1Aなど)、といった身近な電源が使えるようになります。

電磁7セグを動かす回路の基本形

電磁7セグはコイルでセグメントを回転させる点でモーターと似ています。7つのセグメントで字形を表す点では7セグLEDと似ています。 ですのでモーターや7セグLEDを動かす回路が参考になります。

セグメントを反転させるには

電磁7セグのSET/RESET動作を人力でやるなら、手に持ったプラスとマイナスの電極を持ち替えてコイルの端子に触れればよいです。 この動作を電子回路で実現することを考えます。
確認ですが、ここで扱う電磁7セグはコイルのSET端子→RESET端子の向きに電流を流すとセグメントがSET(オモテ面が表示)され、 逆向きに流すとセグメントがRESET(ウラ面が表示)されます(図1-1)。
一つのセグメント(コイル)に対してどちら向きへも電流を流すにはHブリッジ回路が適しています(図1-2)。
と言っても各セグメントにモータードライバーを付けるわけではなく、コイルからH形に線を引き出し(図1-3)(図1-4)、端点を電流の入力、出力、ハイインピーダンスで制御しようということです。

説明図 説明図
図1-1 図1-2 図1-3 図1-4

電磁7セグを7セグLEDのように制御したい

電磁7セグの各セグメントからH形に線を引き出してみると入出力端の多さに気付きます。 7セグLEDもセグメントごとに線を出していますが、入力端を1つにまとめたり(アノードコモン)、出力端を1つにまとめたり(カソードコモン)しています(図2-1)。 これに倣い、電磁7セグの入力側のSET/RESETをそれぞれ1つにまとめます。すると7セグLEDを2つ重ねたような回路になります(図2-2)。

説明図 説明図 説明図
7セグLED(2個) 図2-1 図2-2

この回路でセグメントAをSETしてみます。 具体的には出力側のresetA-G, setB-GをHi-Zにし、入力側のsetから電流を流します。 電流がコイルAを通り、setAへ抜けていく想定です(図2-3a)。しかし実際はそのように流れません。 迷路のようにたどってみると分かりますが、コイルB-Gにも電流が流れます。しかもSET方向にもRESET方向にも流れ得ます(図2-3b)。
※全てのセグメントが不安定な状態となり、回転したりしなかったりの無秩序な動きをしました。

説明図 説明図
図2-3a 図2-3b 図2-4

解決策として、目的のコイル以外へ分岐した電流が戻ってこないような制限を加えます(図2-4)。
これで1個の電磁7セグをアノードコモンの7セグLEDと同様の方法で制御できるようになります。

複数個の電磁7セグを動かす回路の基本形

複数個の電磁7セグは7セグLEDと同様にダイナミックドライブで動かします。

電磁7セグをダイナミックドライブで動かす

説明図
図3-1

7セグLEDのダイナミックドライブの回路は、各7セグLEDから同じセグメント同士を接続して1つにまとめた形です(図3-1)。
これに倣い、各電磁7セグのresetA-G, setA-Gのそれぞれ同じもの同士を接続します(図3-2a)。
ただしこれだけでは前節と同様、目的以外のコイルに電流が流れてしまうので、出力側でも電流の経路を制限する必要があります(図3-2b)。

なお、もっと線を減らそうとしてresetXとsetXを接続してはいけません。 そのようにするとコイルXを通らず入力と出力がショートする経路ができてしまいます。

説明図
図3-2a 図3-2b

以上により、複数個の電磁7セグをアノードコモンの7セグLEDのダイナミックドライブと同様の方法で制御できるようになります。

マイコンで複数個の電磁7セグを動かす回路

マイコンで電磁7セグを制御するには線の数が多いので、シリアル-パラレル変換を行って制御に必要な信号線を減らします。 また、5Vより高い電圧で動かすのでパワー系のドライバが必要です。 マイコンで電磁7セグを制御するには、シフトレジスタとダーリントントランジスタアレイを組み合わせる方法が考えられます。

回路のパターン

コイルを挟んで入力側と出力側で2パターンずつ回路を示します。 組合せは4通り。どう組み合わせるかは部品の入手性も考慮して決めます(図4-1)。

説明図
図4-1 (1000x750px)

IN-1は前節の回路を用いたパターンです。  ※多数のダイオードのハンダ付けが大変だったのでIN-2を考えました。
IN-2,OUT-1はダイオードを使わないことを目的とした回路です。 IN-2の各コイルの入力側はset, resetとも個別にトランジスタアレイの出力ピンに接続されるので、 前節の失敗例のように他のコイルに電流が流れてしまうことはありません。 OUT-1の各コイルの出力側も同様です。
OUT-2で使われているTPIC6B595はシフトレジスタ+トランジスタアレイといったICです。

以上により、マイコンで複数個の電磁7セグを制御する事ができるようになります。

パターンの組み合せ例

仮に4個の電磁7セグを制御するとして、IN1とOUT2の組み合わせと(図4-2a)、IN2とOUT1の組み合わせの回路図を示します(図4-2b)。
回路図の中でタグはマイコンからシフトレジスタへの入力信号を表しています。 DIG_xxxはダイナミックドライブの桁を制御します(set, resetへの入力を制御する)。 SEG_xxxはセグメントを制御します(反転させるセグメントを選択する)。

回路図 回路図
図4-2a (1000x750px) 図4-2b (1000x750px)

作例:カウントダウンタイマー

マイコンで複数個の電磁7セグを制御する例としてカウントダウンタイマーを作りました。
電磁7セグの特徴はカシャカシャとダイナミックに動くことなので、数字がよく動くものを作ると面白そうです。
時計を作ると? 時分秒で6桁あってもよく動くのは秒だけだし…  温度計・気圧計は? あまり値が変わらないし…  で、キッチンタイマー的なものが向いているかなと。

作品と回路図

作例 配線図 配線図
配線図 配線図
作品 配線図
回路図 回路図
回路図(1/2) (800x600px) 回路図(2/2) (1000x750px)

実はここまでに説明した間違った回路で何度か基板を作成してしまいました。 それらは処分するしかないのですが、再利用を試みて何とか2桁の電磁7セグを動かせる形にしました。 そのようなわけで完成品は不格好で、電源接続部分の設計も適当です。  ※複数電源に対応してみよう、基板の空いてるところに入るかな、で後付け。

機能と操作方法

設定した時間(1~99分、または1~99秒)をカウントダウンします。4つのスイッチで操作します。

プログラム

ダウンロード Elemag7seg.zip(プロジェクト一式)
開発環境: Windows10, AtmelStudio7

プログラムはアプリケーションのロジック部、電磁7セグの制御モジュール、ボタン4つを読み取るモジュール、 WDT利用スリープタイマーモジュール、7セグの文字パターン定義からなります。

動作の様子など

おまけ:2021/08失敗基板から2022/07試作品完成まで

数々の失敗。完成した試作品さえも失敗基板でできています。

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制御方法をイチから考えて失敗の度に理解が進み、やっと動かせたときは嬉しかったです。
完全版の基板は作成していません。コロナ禍で世界的な半導体不足のため必要な部品(IC)が入手しづらく。 比較的入手しやすい部品に合わせて回路を設計し直すというのも楽しくないので、この状態で一旦完了とします。